刑事事件において、被疑者や被告人の弁護活動を行う弁護士を特に、“弁護人”といいます。
弁護人には「国選弁護人」と「私選弁護人」の2種類がありますが、それらの違いはどこにあるのでしょうか。
被疑者・被告人等は金銭的な条件を満たす限りどちらの弁護人を選択することも可能です。もちろんそれぞれにメリット・デメリットがありますので、選択の際に参考になるよう、それらについてもご説明します。
1.国選弁護人とは?
国選弁護人は、拘留や起訴された人が金銭的な理由で私選弁護人を選任できない場合、国(裁判官)が弁護士を選任する制度です。
被疑者が勾留されたのちに選任されるのが特徴で、勾留質問時に被疑者が希望すれば、国選弁護人が裁判官によって選任されます。つまり、私選弁護人に依頼する必要がなく、私選弁護人同様の活動を行ってもらえます。費用は原則かかりません。
ただし、国(裁判官)が弁護人を選ぶため、人生を左右しうる裁判において信頼できる弁護人を自ら選択できません。国選弁護人が気に入らないからといって変更することもできません。なお、私選弁護士に切り替えることによって自動的に解任を行うことができます。
また、金銭的な理由がないと国選弁護人は選任されません。本人の資産(預貯金、不動産、車など)が50万円以下であることが必要になります。
2.私選弁護人とは?
私選弁護人は、被疑者や被告人本人やその家族等が、弁護士と契約を締結して弁護人となったものをいいます。
国選弁護人と同様の権限を持ち、できる活動の範囲はどちらも変わりません。私選弁護人と国選弁護人の最大の違いは、「弁護士の選任権」と「弁護士の選任時期」、「交代の可否」にあります。
まず、国選弁護人は国が選任権を持っていますので、面会するまで誰が弁護を担当するか知らされません。ランダムに選ばれた弁護人ですので、裁判のやる気や弁護の実力が低い場合もあります。それに対して私選弁護人は、被疑者・被告人やその家族などが自由に、選任することができます。
次に、国選弁護人は逮捕直後につけることができず、取り調べの際に弁護士のアドバイスを受けられません。一方で私選弁護士は逮捕の前からでも選任することができます。素早い選任によって早期解決を図ることが可能になります。
また、私選弁護人は交代や解任が比較的容易に行えます。本人の信頼できる弁護人を選任することにより、納得のいく裁判を行うことができるのが私選弁護人の最大のメリットです。
3.まとめ
国選弁護人と私選弁護人について、その特徴とメリット・デメリットを表にまとめます。
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国選弁護人 |
私選弁護人 |
選任者 |
国(裁判官) |
本人やご家族など |
弁護士の選択 |
不可 |
自由な選択権 |
弁護人の選任時期 |
拘留後から |
逮捕以前から、いつでも |
選任の条件 |
本人の資産額による |
なし |
権限 |
同一 |
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メリット |
・原則無料 ・依頼の必要なし |
・早期から弁護活動が可能 ・自分で選任・解任できる |
デメリット |
・選任が遅い ・自分で選任・解任ができない ・やる気がない場合や刑事裁判に精通していない場合も |
・費用がかかる |
国選弁護人と私選弁護人のどちらを選択するべきか一概には言えません。
しかし、スピードが重要であって、かつ信頼関係が求められる刑事裁判において、自分に合った弁護士を早期から選任できる私選弁護人のメリットは非常に大きいものです。
刑事事件で弁護士をお探しの方、選任された国選弁護人に不満がある方は、ぜひ1度ご相談ください。